高血圧による血管障害(腎血管障害)

腎臓は血圧は、深い関係にありますィそれは、腎臓から分泌されるホルモンが血圧を上げる作用を持つ一方で、腎臓では血圧を下げる物質も作っていることによります。腎臓の機能が低下すると高血圧を発症しますが、また逆に高血圧が続くと腎臓の機能が低下します。

腎臓の血管に動脈硬化が起こり腎硬化症を発症する

高血圧の状態が長く続くと、腎臓の細い血管(細動脈)に動脈硬化が起こります。心臓から腎臓に送られた血液は、不要なものや有害なものをろ過し、尿を作る役割を果たす糸球体へ送られます。
動脈硬化によって糸球体へ送られる血流が障害されると、血液をろ過する機能も低下します。そして、腎臓が硬く小さくなる「腎硬化症」を起こします。
急激な高血圧の状態が続いて発症する悪性の腎硬化症では、血圧を上昇させるレニンというホルモンが分泌されるようになるため、さらに血圧を上昇させて、それがまた腎臓の機能を悪化させるという悪循環が起こります。
腎硬化症が起こつても、自覚症状が現れにくいので気づかずに進行してしまうことも少なくありません。しかし、放っておくとさらに腎臓の機能が低下して、腎不全に至ることもあります。

腎不全になれば人工透析胃が必要

腎臓の働きが落ちて腎不全に陥ると、老廃物などの体に不要なものが全身を巡るようになり、尿毒症が起こることがあります。
尿毒症は腎不全の末期の状態で、消化器や循環器など全身に影響を与えるほか意識障害なども出て、そのままにしておくと命にかかわります。そのため、極端に弱った腎臓の働きを代わりに行うための透析治療が必要になります。透析治療では、尿毒症を起こしている物質や余分な水分を取り除き、体内に必要な物質が補われます。人工透析を受けている人の原因の第3位は、高血圧などによる腎硬化症(2002年/不明分を除く) です。そして、その数は10年前に比べて2.5倍にも増加しています。腎臓の機能が低下して高血圧になることもありますが、高血圧によって重大な腎臓の障害が引き起こされることもあるのです。

高血圧による血管障害(心血管障害)

高血圧が続くと、心筋梗塞など命にかかわる心疾患も起こしやすくなります。男性では収縮翔血圧が10mmHG上昇すると、心臓の血管障害が起こったり死亡する率が、約15~20%増加するとされています。

心臓肥大→心筋が酸素不足

血圧が高くなると、心臓は強く収縮して全身に血液を循環させなければなりません。それが長期になれば、心臓の筋肉(心筋) にかかる負担が増えるために厚みを増し、肥大していきます。
特に高血圧の人の心臓は、常に強い力をかけてたくさんの血液を全身に送らなければいけないので、左心室が肥大(左室肥大)します。心肥大が進むと心臓の働きが低下して、全身に十分な血液を送ることができなくなり、心不全に陥ります。心不全は、すべての心臓病で起こる可能性がありますが、心不全から狭心症や心筋梗塞を招くことも少なくありません。

狭心症や心筋梗塞が命にかかわることもある

高血圧が引き起こした動脈硬化が、心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶ冠動脈に起こると、冠動脈が硬くなって血液の流れが滞り、そこに血栓ができやすくなります。
それによって血管が詰まり、心筋が酸素不足になると、虚血性心疾患を起こします。虚血性心疾患の代表が「狭心症」と「心筋梗塞」です。狭心症とは、血液の流れが妨げられて心筋が一時的に血液不足になる病気で、突然胸が締め付けられるような痛みが起こります。発作は長くは続きませんが、心筋梗塞に移行することも少なくありません。心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まる病気で、発作が起こると心筋への血流が途絶えてしまいます。その状態が20分以上続くと、そこから先の心筋の細胞は死んでしまいます。壊死した細胞は元に戻ることはありません。そのため、すぐに治療をしないと命にかかわることもあります。
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高血圧による血管障害(脳血管障害)

日本人の死因のなかで、最も高血圧が関係するのが脳血管障害。脳血管障害を起こすと、死に至らなくても重い後遺症を残すことが多く、予防には血圧のコントロールが最も重要とされています。

高血圧で脳の血管が詰まる

高血圧が引き起こす最も怖い合併症の1つが脳血管障害(脳卒中)です。
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こる痛気の総称で、脳の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなって死に至ったり、重い後遺症を残すことがあります。
脳血管障害による死亡者は減少していますが、それでも、まだ日本人の死因の第3位を占めています。
脳卒中の最大の危険因子は高血圧です。収縮期血圧が10mmHg上昇すれば、脳卒中を発症したり死亡する率は、男性では約20% 、女性では約15% 高くなるとされています。そして、その割合は血圧が上がれば上がるほど高くなります。

高血圧と関係が深いラクナ梗塞と脳出血

脳卒中には大きく分けて、血管が詰まって起こるタイプ(虚血性)と、血管が破れて起こるタイプ(出血性)に分けられます。血管が詰まるタイプを「脳梗塞」と言い、脳卒中の7~8割を占めます。
脳梗塞はさらに、動脈硬化のある場所が詰まる「脳血栓」と、主に心臓にできた血栓(血の塊)が血流で脳に運ばれて詰まる「脳塞栓」に分けられます。脳梗塞で高血圧と関連が深いのが、日本人の脳卒中では最も多い「ラクナ梗塞」です。
ラクナ梗塞は脳の細い血管が詰まるので症状は比較的軽いのですが、再発を繰り返したり、気づかないうちに多発しているケースもあります。
すると、まひや言語障害などの後遺症を残したり、認知症を引き起こします。
また、最近増加傾向にある「アテローム血栓性梗塞」は、脳に血液を運ぶ太い動脈が詰まる病気です。主な原因は動脈硬化で、その下地には高血圧があります。

脳出血の大部分が高血圧による

突然強い発作を起こして死に至ることもある出血性の脳卒中には、脳出血やクモ膜下出血があります。特に脳出血は高血圧と深いかかわりがあり、85~90%は高血圧が引き金になって起こります。

無症候性血管障害はいずれ大きな発作を起こす可能性が高い

脳の血管に起こった障害が小さいと、症状が現れないことがあります。これを「無症候性脳血管障害」と言い、放置しておくと、その後に大きな発作を起こしたり、小さな発作が多発することがあり大変危険です。 脳ドックで見つかった場合、専門医で必ず治療を受けるようにしてください。

放置すると血管障害の原因になる

血圧が高い状態をそのままにしておくと、全身の動脈に影響が及びます。冠動脈や脳動脈の血管が詰まった場合は、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしこれが死につながるケースもあるため注意が必要です。

動脈硬化は命の危険につながる

動脈硬化になり動脈内の通り道が狭くなると、血液が流れにくくなります。さらに血栓(血の塊) ができて血液の流れが完全にふさがれてしまうと、その先に酸素と栄養が供給されなくなり、組織は死んでしまいます。
高血圧はこのような血管への影響を全身の動脈に及ぼします。動脈硬化が心筋に血液を送っている冠動脈に起こると、狭心症や心筋梗塞などの「心血管病」、脳の動脈に起こると、脳梗塞や脳出血などを引き起こします。
平成15年の日本人の死因の第1位はがんですが、心疾患は第2位、脳血管障害は第3位と、高血圧が影響したり原因によって病気で亡くなる人は増加しています。

腎臓や足、目の動脈など動脈化は全身に起こる

動脈硬化の影響は心臓と脳だけではありません。腎臓や下肢、目の網膜などに動脈硬化が起こると、命にかかわることはなくても、体にさまざまな障害をもたらします。動脈硬化は糖尿病、高脂血症、痛風、肥満などによっても引き起こされますが、

最も大きな危険因子は高血圧です。ほかの危険因子も併せ持っていると、それだけ動脈硬化の進行を加速させてしまいます。メタポリックシンドローム のように、日本人にも危険因子を複数持つ人が増えています。血圧が高い人は、血圧を下げるだけでなく、ほかの危険因子を少しでも減らして、動脈硬化に対して注意することも必要です。また、動脈硬化への危険性をしっかり認識することも大切です。

血圧が高い状態が続くと血管の負担によって動脈硬化を促進させる

動脈硬化は誰でも10~20歳をすぎるころから始まります。加齢により避けることはできません。通常は年齢を重ねるにつれゆっくり進行しますが、高血圧があると血管の老化が急速に進みます。動脈硬化は大きく3つのタイプに分かれますが、モのいずれにも高血圧がかかわっています。

血管は硬くもくなりり内腔を狭くする

動脈は血液を体のすみずみにまで運ぶ、いわば血液の輸送路です。血圧が高い状態が続くと、この動脈の血管壁に絶えず強い圧力がかかります。すると、血管壁が弾力性を失い、厚くなったり硬くなったりして、血管の内腔が狭くなります。

これが動脈硬化です。動脈硬化は、誰でも10~20歳代で起こり始め、高齢になるとある程度は進行しています。
しかし、高血圧があると、血管内腔の内皮細胞(血管の内膜で血液に接する部分)も障害されます。すると、そこからコレステロールなどが動脈の内壁に侵入しやすくなつてしまいます。そして、コレステロールに呼び*寄せられたマクロファージや、傷ついた内皮細胞を修復しようと血小板などの血液の成分が集まり、動脈硬化の進行をさらに加速していくのです。

動脈硬化のほとんどがアテローム硬化

動脈硬化にはさまざまなタイプがありますが、大きく分けると次の3タイプに分けられます。

アテローム硬化(粥状硬化)

内皮細胞が障害されると、血小板が集まってきて血栓(血の塊) ができたり、コレステロールなどがたまって内膜にアかゆテロームという粥のような塊ができて、血管内腔が狭くなります。
高齢者に多く、一般に動脈硬化というと、このアテローム硬化を指します。冠けい動脈、脳動脈、頚動脈、腎動脈などによく起こります。

大動脈硬化

血管の狭窄は起こりませんが、血管が硬くもろくなって内圧に耐えられなくなり、大動脈痛が起こりやすくなります。また、血管壁が傷つまいて卦がれる大動脈解離を起こすこともあります。腹部や胸部の大動脈に起こります。

細動脈硬化

脳や腎臓などの臓器の毛細血管につながる細い動脈(細動脈) に起こる動脈硬化です。複数の細動脈に起こると、臓器の働きに障害を及ぼします。

マクロファージについて

もともとは白血球の成分で、貧食細胞とも呼ばれます。異物や老廃物を包みこんで食べてしまうことで、免疫システムで重要な役割を果たしています。

高血圧に注意することで動脈硬化を防ぎ、血管は若く保つことができます。
健康長寿は、動脈硬化を防ぎ、血管を若々しく保つこと