別の病気が原因で高血圧になる二次性高血圧は、決して多くはありませんが約10% の人に見られます。若い年代ほど割合が高いので、若年層の高血圧の人はほかの病気の有無を調べることが大切です。
腎性高血圧
腎臓は、血圧と密接な関係を持つ臓器です。別の病気が原因で起こる高血圧で、最も多いのが腎臓の痛気によるもので、高血圧全体の2~5% を占めます。
腎臓の病気や、腎臓にダメージを与える病気に伴う高血圧を「腎性高血圧」と言います。腎性高血圧はさらに、腎臓自体の障害によって血圧が高くなる「腎実質性高血圧」と、腎臓の動脈が障害されて血圧が高くなる「腎血管性高血圧」に分けられます。
腎実質性高血圧の主なものには腎炎、慢性腎孟腎炎、糖尿病性腎症、痛風腎、妊娠腎、腎結石などがあります。
腎臓はナトリウムや水分の量を調節して、血液の量を適正に保つ役割を持っています。この機能が低下すると、血液の量が増えて血圧が上がります。
また、腎臓が障害されると、腎臓で産生される血圧を上げる作用のあるレレニンというホルモンが過剰に作られる一方で、血圧を下げる作用を持つプロスタグランディンE2という物質の産生が低下してしまいます。このように、腎臓の働きに障害があると、血圧にさまざまな悪影響を及ぼすことになるのです。
腎動脈の動脈硬化などで上がる
心臓から送り出された血液の約2割が腎臓を通過します。そのため、腎臓の血管に動脈硬化が起こつて血流が悪くなると、血圧が上がります。これを「腎血管性高血圧」と言います。
腎臓の動脈が狭くなる原因として最も多いのは、高齢者に起こりやすいアテローム性動脈硬化です。
高齢化とともに、腎血管性高血圧も高齢者を中心に徐々に増えています。腎血管性高血圧にはほかに腎動脈硬化、線維筋性異形成、大動脈炎症候群などがあります。
内分泌性高血圧
ホルモンが分泌過剰になる
二次性高血圧のなかで腎臓の障害に続き、2番目に多いのが「内分泌性高血圧(副腎性高血圧)」です。副腎は左右の腎臓の上にある小さな内分泌器官です。内分泌器官とは、体のいろいろな臓器の働きを調整しているホルモンを分泌している臓器のことです。
副腎は外側の皮質と内部の髄質に分かれており、それぞれが別のホルモンを分泌しています。副腎から分泌されるホルモンは、血圧との関係が深く、皮質から分泌されるアルドステロンは腎臓の尿細管でナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促します。
また、髄質から分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンは血管を収縮させて、血圧を上げる作用を持っています。これら以外にも副腎からはさまざまなホルモンが分泌されています。それらの量が多すぎることで生じる高血圧を「内分泌性高血圧」と言います。
内分泌の異常は血液検査やCT、MRIなどでわかる
副腎の内分泌の異常で起こる主な病気には、「原発性アルドステロン症」や「クツシング症候群」などがあります。
原発性アルドステロン症とは、アルドステロンの分泌量が異常に増える病気です。アルドステロンはカリウムの代謝にかかわっており、アルドステロンの分泌量が増えると、血液中のカリウム量が低下してナトリウム量が増え、血圧が高くなります。
また、クッシング症候群は、副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドというホルモンの分泌が過剰になる病気です。糖質コルチコイドは糖の代謝にかかわるとともに、血圧を上げる物質を増やす作用があります。
そのため、糖質コルチコイドの分泌量が増えると、やはり血圧が上がります。これらの病気以外に、「甲状腺機能克進症」や「甲状腺機能低下症」、あるいは副腎皮質に腫瘍ができる「褐色細胞腫」などがあります。二次性高血圧は血圧が高くなるだけでなく、特徴的な症状を伴うことが多いものです。
内分泌の異常が疑われるときは、血液や尿中のホルモン量を測る検査のほか、CT、MR Iなどの画像検査を行います。また、アイソトープを用いた核医学検査を行うこともあります。内分泌異常が認められた場合は、状況に応じて薬物療法や放射線療法、あるいは手術が行われます。
脳神経疾患による高血圧
まれにしか見られませんが、神経系の異常で高血圧になることがあります。脳血管障害や脳腫瘍といった病気や、脳外傷によって脳がむくみ脳庄が高まったときに血圧が上がることがあります。
また、循環や呼吸の調節に重要な役割を果たす延髄や橋に炎症が起こる小児麻痺(ポリオ)、ギラン・バレー症候群などの神経炎が原因となることもあります。
そのほかにも、血圧を心配しすぎたり、緊張しすぎて血圧が高くなる心因性の高血圧のタイプもあります。
脳出血や脳梗塞などの脳血管障害に伴ぅ高血圧は、発症して1~2週間以内は血圧が上昇します。しかし、多くの場合しゆは安静にして脳浮腫の治療を行うことで、降庄薬を使用しなくても数日以内で血圧は下がります。
脳腫瘍など、脳内を圧迫して血圧が上がっている場合は、手術で圧迫を取り除くことで血圧は下がります。良性の脳腫瘍の多くは、手術によって腫瘍部分をすべて切除することが可能です。
現在では、脳ドックが普及したことやCT、MRI撮影によって、症状が出る前に発見される脳腫瘍も多くなっています。
その他の病気が原因で血圧が上がるケース
大動脈の一部が細くなったり、大動脈弁の障害で血圧が高くなることがあります。
胸部の大動脈の一部が狭くなる「大動脈縮窄症」という病気では、上半身が高血圧、下半身が低血圧になることがあります。大動脈縮窄症は先天性の病気で、上半身と下半身の収縮期血圧の差が20~30mmHg以上になることもあります。「大動脈弁閉鎖不全症」は、左心室と大動脈にある大動脈弁が完全に閉じられなくなる病気です。そのため、左心室から大動脈へ送り出された血液が逆流するため、心臓の負担が大きくなって血圧が上がります。
先天的な異常のほかに、リウマチや感染性の心内膜炎に伴って起こることがあります。
また、「妊娠中毒症」を起こした場合、高血圧になることもあります。妊娠中毒症とは、妊娠20週目以降に高血圧、むくみ、たんばく尿の1 つ以上が起こるものを言い、妊婦の5~10% に見られます。妊娠中に高血圧になると、分娩後もそのまま高血圧が改善されないことも少なくありません。また、出産後に正常値に戻っても、ある程度の年齢になってから再び高血圧になることもあります。高血圧の家族歴がある人は特に注意が必要です。